| 週5日制雑感 |
2〜3週前になるでしょうか、NHKの解説委員が週5日制になって小中高生の生活がどう変わったかについてテレビで説明していました。内容をはっきりとは覚えていませんが、子どもたちに対するアンケート結果では、「家で無意味に過ごす時間が長くなった」という意見が目立っていたと記憶しています。解説委員も、時間的なゆとりを有効に使えていないと考えていたようです。しかし、いずれにしろそのいい加減な記憶によって論評するわけにはいきませんので、ネットで実際のアンケート調査の結果を手に入れ、それに基づいて書いていきたいと思います。 入手できたのは千葉県と岩手県のアンケート調査結果です(標本数は前者が生徒・保護者各2千名前後、後者が各3千5百名前後)。 まず、簡単にアンケート結果をまとめますと、どちらの県でも「土曜日は友だちと一緒にいる」の割合が最も多く、千葉県の中学2年生では68%に及んでいます。 ついで「家族と一緒」が48%、「一人」が21%となります(千葉県のアンケートは選択肢から2つまで選べる)。これが、小学2年生ではそれぞれ27%、90%、7%ですから、小学生の特に低学年に関しては、土曜完全休日制は明らかに奏功していると言っていいでしょう。ところが、保護者に対するアンケート結果では、「テレビを見たりゲームをしている時間が増えた」が小学生の場合66%、中学生で49%と圧倒的に多く、子どもたちの意見との食い違いが目立っています。 また、中学生にとっては「部活動の時間が増えた」も割合が大きく、千葉では44%、1つしか回答を選べない岩手でも6月の調査で21%、12月が14%でした。岩手の12月の結果を列挙しますと、小学生が「友だちと一緒」19%、「一人でゲーム等」17%、「家族と一緒」16%、「自分の趣味」10%で、中学生が「友だち」17%、「一人」15%、「部活動」14%、「家族」13%となります。ところが、岩手でも中学生の保護者の方の結果は、「一人」18%、「部活動」15%、「友だち」14%、「何もしない」13%となり、なんと「家族」は登場しません。 子どもたちは休みを歓迎し、「良い効果があった」と思わせるよう回答するでしょうから、これは当然と言えば当然の結果でしょう。しかしながら、「保護者が学校に望むこと」の答えで「計画的に宿題を出してほしい」がトップなのは分かるものの、「遊びやスポーツのために校庭や体育館を開放してほしい」が2位だったのがやや気になります。これは、「子どもと一緒にいたくないので」週5日制に批判的な回答をしているということの表れとも言えるのではないかと思えるからです。 確かに、「平日懸命に働いているのだから、週末くらいは一人でゆっくりと休ませてほしい」という保護者の方々の気持ちは良く分かります。実際、私自身もまれにそう思うことがあります。ただ、週5日制の是非は別として、家族の関係を見つめ直すとき、親がそのような気持ちでいては子どもとの心の乖離がますます進んでしまうでしょう。文科省が謳った「家族との団らんの時間を増やす」という狙いは、目標としては決して間違っていません。とりあえず週5日制が実施されてしまったのですから、少なくとも我々保護者は、可能ならば望ましい家族の姿に近づけるよう若干なりとも努力をすべきだと思います。 わずか14年の子育て経験しかない私がだいぶ偉そうなことを書いてしまいましたが、残念ながら、上記のアンケート結果は、とにかく現実問題としては土曜日完全休日制が家族との団らんをもたらすことにはつながっていないことを証明しています。また、中学生の場合は、明らかに部活動の時間が延びていることも示しています。そしてその部活動の延長は、週5日制実施前から極めて容易に予想ができることでした。にもかかわらず、岩手はもちろん、首都圏と呼べる地域もある千葉でさえもそれが目立っているのです。 これは完全に学校単位の指導の甘さの結果と言っていいでしょう。我が芳賀郡でも「第2土曜と第3日曜は部活をしない日とする」などのルールを設けている学校がありますが、実際にはそれが形骸化している部もあるようです。「土曜日も練習しないと強くなれない」「うちが休んでいる間に他校は練習している」「部活をやらないと生徒が非行に走る」――学校側の思惑はいろいろとあるでしょうが、それらの懸念がどうしてもぬぐえないなら、土曜の部活禁止を県教委が厳しく指導し、違反した部には各種大会への参加資格剥奪などの制裁を加えるべきです。「土曜日完全休日化は『子どものゆとりの醸成』のためにあるのだ。今回の改革は本気なのだ」というところをもっとしっかりアピールすべきです。教育機関にそのような強い姿勢が見られれば、我々保護者も今よりは真剣に子どもと接するよう努力するのではないでしょうか。 話は変わって、やや余談になりますが、初めに触れたNHKの番組を見ていて一番情けなかったことをここで書いておきたいと思います。「『心配されていた』塾通いは増えていなかった。」という解説委員の一言です。 マスコミが今まで何十年間「塾」を悪者にしてきたのか想像もつきません。そして今後何十年間「塾」を悪者にすれば気が済むのか、これまた予想だにできません。いや、天下の国営放送の解説委員が21世紀になった今でもこういうセリフを吐く日本で、「塾」という存在が日の目を見る日が本当に来るのか、不安を通り越してもはや恐怖すら覚えます。しかも、その番組内では部活動時間の延長については一言も触れられなかったのです。子どもたちの学力を上げようと懸命に競い合っている存在であっても塾はとにかく社会悪であり、子どもたちのエネルギーをどれだけ吸い取る存在であっても部活動はとにかく必要なもの、ということなのでしょうか。腹立たしいというより、情けない、悲しいという表現がよく似合う解説委員の言葉でした。 やや感情的になってしまいましたので話を元に戻しましょう。結論として週5日制は、半分は現状の家族関係を理解できていなかったという理由により、また半分は部活動延長を食い止められなかったという理由により、今のところ予想通り失敗に終わっていると言っていいでしょう。 その上、全日本教職員組合(通称「全教」)が昨年7〜9月に実施した1万6千名強の小中学校の教員に対するアンケートでは次のような結果が出ています。「子どもの学校生活でゆとりは生まれたか」に対する回答では「とても忙しくなった」が55%で最多、「特に感じていることを2つ選べ」では「子どもの学校生活があわただしくなった」が72%、「1日あたりの授業時間が増え、かえって授業に子どもが集中しない」が50%で1位と2位を占めています。そして、「親子のふれあいの機会が増えている」の回答率はわずか9.3%でした。週5日制は、学力低下の懸念、休日の過ごし方に対する不安などとともに、学校内教務における教員の困惑も生み出したようです。 イラク戦争まっただ中の3月20日に発表された教育基本法改正に関する中教審の答申が「右傾化している」と激しく非難を浴びました。今このことに触れている余裕はありませんが、さまざまな改革について考えれば考えるほど、漠然とした不安と共にとりとめのない疑問が湧いてきます。我々が経験してきた「改革」や「改正」の、成功例と失敗例の比率はいったいどれくらいになるのかと。そして、今後その比率はどう推移していくのかと。もちろん答えなど出るはずもありませんが、これらの問いかけは、明治・大正・昭和の多くの有志たちが感じた絶望感・無力感とおそらくは似ているであろう感情を我々に抱かせます。我々は、国策にあらがうことはできないのかと。国家が非行に走ろうとしているとき、我々にはそれを止めることができないのかと。我々は、数多の改革を「良きもの」としてただただ受け入れていくしかないのかと……。 2003年5月 渡辺私塾荒町教室塾長 渡辺佳寛 ※千葉・岩手・全教のアンケート結果の詳細は以下のサイトをご覧下さい。 ただし、全教の結果は、お使いのパソコンにAcrobat Readerがインストール されていないとご覧になれません。 千葉 http://www.city.kashiwa.chiba.jp/oshirase/osirase/3.24kekka.htm 岩手 http://www2.iwate-ed.jp/sed/contents1/5days-report2.html 全教 http://www.zenkyo.org/ganba/saisin/2002/021109b1.pdf |
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